溶接焼けで困っていませんか?

ステンレスの溶接では、溶接後の表面の焼け(スケール)の処理が大切になります。溶接時の温度と雰囲気によって、ステンレスの素材自体にスケール層とアンダースケール層が生成されます。(図1)
これがいわゆる溶接焼けといわれるものですが、溶接焼けは外観の変化だけにとどまらず、ステンレス自体の組成の変化も伴い、不動態被膜の破壊や電食など、トラブルの原因になるので、完全に除去しておくことが大切なのです。

まず、材料のステンレスについて、ちょっと説明しましょう。
ステンレスがさびにくいのはどうしてか、ご存知ですか?

ステンレスがさびにくいのは、表面に不動態被膜という極薄い膜が形成されていて、この膜が水分や酸などの腐食の原因から守っているのです。不動態被膜は、非常に安定していますが、塩素イオンや溶接時の熱や研削(ワイヤーブラシ、ディスクグラインダー等の外部からの機械的な刺激)により破壊されることがあります。
特に、溶接時の熱でステンレス合金中の組成が変化し、スケール層(いわゆる焼けと呼ばれるもの)とアンダースケール層が形成され、ステンレスの特徴である耐腐食性に大きな影響を与えます。

溶接時の熱によって、ステンレスの表面には、(図1)のようなスケール層とアンダースケール層が形成されます。これは肉眼では、判断できません。溶接による加熱によって、Crの拡散現象がおこり、Crが表層部やスケール層に移動します。
また、このとき500~800℃の温度域を一定時間経過すると、結晶が肥大化し、この部分にCr炭化物が析出して、粒界腐食割れ(二番割れの最大の原因です)を起こすこともあります。
また、このアンダースケール層では、Cr含量が大きく低下し、ステンレス合金の特徴を発揮するといわれているCr含量の12%を下回ることもあります。
そうなると、ステンレスの最大の特徴である耐腐食性に大きな影響が生じてきてしまいます。

ですから、焼けと呼ばれる表面のスケール層を取り除くだけでなく、このアンダースケール層まで完全に取り除くことが非常に重要になってくるのです。

溶接焼けは、生じるスケールもFe2O3、FeO・CrO3、Cr2O3などから構成され、材種、加熱温度、雰囲気の組成などによってさまざまです。しかし、生じるスケールは、共通して緻密で非常に硬く、除去は容易ではありません。下記にいくつか焼け取りの方法とその特徴を説明していきます。

◇削法(機械的方法)

サンダー掛けやブラストによって、スケールを除去する方法です。物理的な方法によって、表面のスケールを取ることは可能ですが、不動態被膜が破壊された状態になっています。研削法では、ワークの表面が傷つき、酸化するので、スケール除去後は必ず不動態化処理を施すことが必要です。

◇洗法(化学的方法)

硝フッ酸を使うのが一般的ですが、有害ガスの発生に注意する必要があります。厚板の場合には、塩酸と硝酸の混合液「王水」が使用されることもあります。

◇解法(電気化学的方法)

電解法には、使用する電流による交流法と直流法があります。また、使用される電解液の種類によって、中性と酸性電解法があります。

交流法は、2B材等の焼け取りに適します。ステンレスに対する溶解力が弱く、不動態処理効果が全くないので、後工程でそのような処理を施す必要があります。
これに対して直流法は、鏡面状(ピカピカの状態)に仕上がり、不動態化処理も同時に行うことができます。

その他の方法として、トランスを2つ用いた直流に交流を重ねて行う交直重乗方式《(株)ケミカル山本の特許技術》があります。仕上がり状態の改善と不動態化処理も行うことができ、六価クロムの発生を抑制できるという特徴をもっています。

電解液の性質の違いによる特徴をお話しましょう。中性塩電解液を使用する中性電解法は、無機中性の電解液を使用し、電解液の廃棄時に後処理が容易という長所がある反面、焼け取り速度が遅い、六価クロムが発生しやすいという短所もあります。

酸性の電解液を使用する酸性電解法は、焼け取り速度が早く、六価クロムの発生が少ないという長所と、廃液の後処理が中性と比べ大変なことと、酸性液を十分に水洗する必要があるという短所があります。

いずれにしても、溶接後に適切な方法で、スケールとアンダースケールを除去し、破壊された不動態被膜を再度形成するような処理をすることが重要です。不動態化処理がされていないと、全面腐食、孔食などの腐食を生ずる原因になります。

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